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■ 夏にこそ読みたい本!2008.08.15

これまでの人生で一番読書をしたのは大学時代でしょう。ノスタルジーや幻想的な話が好きで、当時は長野まゆみさんや内田百閧フ話をよく読んだものです。
お盆時期ということも考慮して1作品お薦めをあげるなら、内田百闥「冥途」でしょう。舞台は土手の下にある一膳飯屋の小屋。そこに入った「私」は奥でしゃべる男達の話し声を耳にする。声を聞いているうちに知らずに流れる涙。そのうち「蜂をビードロの筒に入れ目張りをすると紙がオルガンのように鳴った」「眺めていたら子どもがくれとせがむから縁側へ出たら石で微塵に毀れて蜂が逃げてしまったよ」耳にはいてくる話の情景はなぜかしっかり目に浮かぶ。「お父様!」私は叫んだ。しかし男性は連れの者たちと一緒に外へ出て行ってしまう。「そろそろいこうか」最後に私の耳に響いた言葉。彼らの姿はいつしか土手の上にありその姿はうるんだように溶け合いきえていく。そんなストーリーでした。亡くなった父とのつかの間の不意の再会。描写がとても幻想的でこの話をきっかけに私は卒論を「内田百閨vに決めたのです。あれは今から10年以上も前の出来事なのでした。
幻想的で昭和を感じるお話に興味を持たれた方は一度本屋さんで手にとってみてくださいね。
「冥途」内田百閨iうちだひゃっけん)著ちくま文庫